女性活躍推進法の改正と「えるぼし認定」選ばれる企業へのロードマップ

はじめに

2026年4月より、女性活躍推進法が大きな転換期を迎えます。常時雇用101人以上の企業において「男女間賃金差異」「女性管理職比率」の情報公表が義務化されるなど、もはや「女性活躍」は一部の大企業だけが取り組む課題ではありません。

「うちは関係ない」「まだ先の話だ」と放置していると、ある日突然、採用市場から完全に孤立したり、公共調達で不利になるリスクがあります。

本記事では、2026年法改正のシビアなポイントと、優良企業の証である「えるぼし認定」を取得することで得られる、驚くべき経営上の実利と具体的な対策について、社会保険労務士の視点から徹底解説します。

 

1. 改正のポイント:2026年4月から何が変わった?

まずは、法律の有効期限が2036年まで10年間延長されました。これは国が「女性の活躍なしに日本の成長はない」と強いメッセージを発信している証拠です。

そして、今回の改正で最も注目すべきは、情報公表義務の対象拡大です。これまで301人以上の企業に課せられていた「男女間賃金差異」の公表が、101人以上の企業にも義務付けられました。101人以上の企業は、単に行動計画を策定するだけでなく、自社の「リアルな数字」を国が運営するデータベースや自社ホームページで世間に晒さなければならなくなります。この「見える化」が、企業の明暗を分けることになります。

「賃金の基準に男女差は無いから、うちは差はありません。」とおっしゃる企業様でも、いざ計算してみると男女で差があることに気づかれ、驚かれることも多いです。

女性の方が短時間勤務や残業免除、非正規雇用の割合が多い傾向にあること、それに加えて1番大きな差の原因とも言われているのが女性管理職の少なさです。

つまり、これからの時代に男女の賃金差異を是正し、求職者から選ばれる企業になるためには、「女性管理職の育成」が避けて通れない最重要課題になります。そして、この課題に本気で取り組み、優良な環境を整えた企業に対して国から与えられるお墨付き制度が「えるぼし認定」です。

2. 「えるぼし認定」とは?クリアすべき5つの基準

えるぼし認定とは、いわば国(厚生労働省)が認める「女性が本当に働きやすい企業の証」です。 具体的には、以下の「5つの評価基準」がチェックされ、クリアした項目数に応じて3段階(1つ星〜3つ星)のマークが与えられます。

  1. 採用 男女ともに対等に採用され、活躍しているか?
  2. 継続就業 女性社員が平均して長く勤められているか?(すぐ辞めていないか)
  3. 労働時間 残業時間が少なく、ワークライフバランスが保たれているか?
  4. 管理職比率 会社の意思決定に関わる女性管理職が、産業平均以上にいるか?
  5. 多様なキャリア パートから正社員への登用など、多様なキャリアの道があるか?

「うちにはハードルが高すぎる」と思われるかもしれませんが、実は5つのうち1〜2個クリアするだけでも「1つ星」や「2つ星」の認定を取得できます。全てクリアで3つ星認定となります。
※ただし、クリアしていない項目にも一定の改善が必要です。

情報公表の義務化をただの負担(コスト)で終わらせず、自社の強みを活かしてこの「えるぼし認定」を取ることは、企業に次のような強烈なメリット(投資効果)をもたらします。

3. 女性管理職の増加がもたらす「意欲」の連鎖と離職率低下

女性管理職が増えることは、単なる「行政からのノルマ達成」ではありません。社内にロールモデルが身近に存在することで、若手女性社員の「私にもこの会社でキャリアを築けるかもしれない」という自己効力感が生まれ、モチベーションが飛躍的に向上します

これが、優秀な人材が「この会社で長く働きたい」と思う決定打となり、結果として中小企業が最も頭を悩ませている「中堅社員の離職率の低下」を強力に促します。

女性が定着する職場は、ライフイベント(結婚・出産)を理由として一時的に育休や短時間勤務となったとしても、会社を辞めずに『継続就業』できる環境が整っています。その結果、貴重な中堅社員の離職を防ぎ、採用・育成コストの大幅な削減に直結するのです。

4. 優秀な人材が集まり、男性の働き方も変わる

「えるぼし認定」を受けている企業は、採用市場において圧倒的に優位となります。現在の求職者、特にZ世代や優秀な女性層は、求人票の「アットホームな職場です」といった曖昧な文言は信じていません。厚生労働省がお墨付きを与えた「えるぼし認定」という客観的な証を見てシビアに判断しています。

また、女性が活躍しやすい環境を整える過程(時短勤務の整備や業務の見える化など)で、長時間労働の是正や柔軟な働き方が社内全体に浸透します。これは女性だけでなく、育児や介護に関わる男性社員の働き方の質的改善にも繋がり、組織全体のエンゲージメントを高める結果となります。

5. 人事評価の見直しで「生産性向上」を促す

女性活躍を推進する際、多くの企業が避けて通れないのが「人事評価制度の見直し」です。 「長く会社にいる人が偉い」「残業している人が頑張っている」という従来の評価基準のままでは、限られた時間で成果を出す育児中の女性などは正当に評価されず、モチベーションが低下します。

そこで、「時間当たりの成果」を正当に評価する仕組みへとシフトします。評価制度を見直すことで、全社員が「限られた時間内で最大のパフォーマンスを出す」という意識に変わり、ダラダラ残業が削減され、結果として組織全体の生産性が向上します。これこそが、女性活躍推進がもたらす最大の経営メリットです。

6. 公共調達や補助金での「加点」という「正当な優遇措置」

「えるぼし認定」の取得は、単なる企業のイメージアップ(ブランディング)に留まりません。 実務において最も強力なのが、行政が発注する公共調達(入札)での「加点措置」です。総合評価落札方式や企画競争(プロポーザル案件)において、えるぼし認定企業は評価点数が上乗せされるため、競合他社に対して優位に立つことができます。

さらに、各種助成金や国・自治体の補助金の申請においても、認定を取得していることが加点要素(優遇措置)となるケースが急増しています。つまり、えるぼし認定は「売上アップ」と「資金調達」の両面において、ダイレクトに利益をもたらす経営の武器になるのです。

7. まとめ:法改正をチャンスに変えるために

2026年の法改正への対応は、決して「法律だから仕方なくやる義務(コスト)」ではありません。深刻な少子高齢化と人手不足が進む日本において、他社に先駆けて人材を確保し、持続可能な組織を作るための「なくてはならない、必要な投資」です。

えるぼし認定を取得するためには、直近の実績データ(平均勤続年数や残業時間など)を集計し、労働局へ申請する準備が必要です。直前になって慌てて形だけを整えようとしても、過去の実績数値は変えられません。手遅れになる前に、計画的に動くことが、未来の採用コストや離職リスクを最小限に抑える最大の防衛策となります。

「自社が義務化の対象になるのか分からない」「えるぼし認定の基準をクリアしているか診断してほしい」という経営者様・人事責任者様は、ぜひ一度、当事務所までお気軽にご相談ください。現状の分析から、情報公表、認定取得まで、実務に即して誠実に伴走サポートいたします。


執筆:社会保険労務士 杉田 まゆこ

女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定、情報公表や「えるぼし認定」の取得、法改正への対応について、より詳しいアドバイスが必要な方は、お気軽にご相談ください。貴社の状況に合わせた最適な対策を一緒に検討させていただきます。

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参考文献

女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定、プラチナえるぼし認定)